海外のよつばと!

YOTSUBA&! Comics

ベトナム(新)

表紙(ベトナム) 表紙(ベトナム)
タイトルYOTSUBA&!
出版社IPM
形式カバー
サイズ180×130×14mm
集めた数13

ベトナム語版は2025年現在3種類が存在する。大きくTVN Comicsの2種と、今回のIPMの1種である。刊行時期は2024年以降で、年代が新しいこともあり仕様がかなり日本に近い。

カバー、カバー下の小ネタ、巻末のカラーページなどもすべて掲載されているが、特筆するべきは特性カバーが付いている点。2024年の新刊行時に全巻ともに特性カバーが付いた状態で販売されたようで、カバーの上にカバーを被せるという、今まで見た中では唯一の仕様になっている。(この仕様を知らなかったせいで版違いかと思い2つ入手してしまった…)

翻訳の方針としてはオノマトペなどはすべて現地語に置き換える方針のようで、日本語は極力排除されている。

朝だ(日本)
日本語版第1巻2話
朝だ(英語)
英語版(新)第1巻2話
朝だ(ベトナム語)
ベトナム語版(新)版第1巻2話

翻訳比較:翻訳家→こんにゃくや

こんにゃくや(日本)
日本語版第1巻7話
こんにゃくや(ベトナム語)
ベトナム版(新)第1巻7話
こんにゃく(ベトナム語)
ベトナム版(新)第4巻24話

1巻の終盤のシーンで、よつばが「翻訳家とこんにゃくやを間違える」というものがある。これは日本語特有のシャレであるため、言語ごとに違いが出やすく面白い。

まずは日本語におけるやりとりから。

とーちゃん「んー?」「しごとー?」「翻訳家だよー」

よつば「こんにゃくや」
風香「へ?こんにゃく屋?」 出典:日本語版第1巻7話

続いてベトナム語におけるやりとり。

とーちゃん「HÀ?」「BỒ LÀM NGHE GÌ Á?(なに聞いてんだ?)」「DỊCH GIẢ.(翻訳家だよ)」

よつば「LÀM BỊCH CHẢ.(ハムつくってる)」
風香「HẢ? LÀM CHẢ Ả?(え、ハム?)」

出典:ベトナム語版(新)第1巻7話

日本語のシャレはキープせず、別の単語に置き換えている。
まず、風香が返した「LÀM CHẢ」のうち、CHẢには「すり身」や「ハム」、LÀMには「〜を作る/行う」といった意味があるので、「ハムづくり」といったニュアンスになる。「DỊCH GIẢ(翻訳家)」から「LÀM CHẢ」に行き着くために、日本語では「しごとー?」と返している部分で「LÀM(行う)」を含む単語を挟み、「LÀM BỊCH CHẢ.」につなげ、聞き返しで「LÀM CHẢ」に着地する。

さて、これだと4巻24話に登場するこんにゃくのくだりをどう処理しているのか気になるところだが、なんとそちらではこんにゃくのパッケージに「CHẢ HỮU CƠ(オーガニックハム)」と書いてある。確かにハムと言われればハムにも見える。
おそらく、4巻のこのネタを踏まえて1巻のシャレでハムを選択したのだろう。 話の流れはほぼそのままで、風香はとーちゃんに美味しいハムの選び方を尋ねるというネタになっている。

翻訳比較:アブラゼミとクマゼミ

クマゼミ(日本)
日本語版第1巻6話
クマゼミ(ベトナム語)
ベトナム語版(新)第1巻6話

よつばと序盤にはしばしばセミの名前が登場する。
ベトナム語ではどう翻訳されているかについて紹介する。

ジャンボ「おーおめでとう あぶらぜみだ」

ジャンボ「クマゼミだ!クマは今日それ一匹だけだ!一番大きいぞ」

出典:日本語版第1巻6話

ジャンボ「Ó, CHÚC MỪNG NHA.(おー、おめでとう) VE SẦU NÂU LỚN ĐÓ.(茶色ぜミだ)」

ジャンボ「VE SẦU ĐEN KHỔNG LỒ HẲN HOI NHÉ!(大きな黒ゼミだ!) HÔM NAY BẮT ĐƯỢC MỖI MỘT CON THÔI ĐẤY!(今日はそれ一匹だけだ!)TO NHẤT BỌN LUÔN!(一番大きいぞ)」

出典:ベトナム語版(新)第1巻6話

どうやら色と大きさでしか区分けをしていないようだ。
翻訳を順に見ていくと、まず、「VE SẦU」がセミを指している。ベトナム語はほとんどの場合に修飾語が被修飾語の後ろに来る言語であるため、「〇〇ゼミ」と言い表す場合は「VE SẦU」の後ろに言葉がくっつく。

今回の場合、「NÂU LỚN」が「茶色」、「ĐEN / KHỔNG LỒ」が「黒 / 大きな」を示しており、「VE SẦU NÂU LỚN」で茶色ゼミ、「VE SẦU ĐEN KHỔNG LỒ」で大きな黒ゼミといったニュアンスになる。

ベトナム語版はセミに文化的な馴染みが無い北米版などと似たような訳し方になっているが、決してベトナムにセミがいないわけではない。
ベトナムにもセミは生息しており※1、緯度的にも日本より20度ほど南に位置しているため、セミの生存可能な緯度的も十分な環境のはずである。
Wikipediaのページがあるぐらいには馴染みのある虫といえる。※2

ただ、先ほど引用したサイトにも記載のある通り、あまりベトナムのセミの情報は無い。唯一見つけた個人ブログによると、ホーチミンはアブラゼミのみとのこと。※3 単行本を出版しているIPMは首都ハノイにある会社だが、ハノイにも一応セミはいるようだ。※4
ただ、ここまでの情報の少なさを見るに、あまり種類がいないのかもしれない。おそらくは、日本におけるアブラゼミやクマゼミといった大きさやレアリティの共通認識が取れる種類が少ないために、今回のような色や大きさでの訳になったのだろうと思われる。


出典

  1. ホーチミン市で今年初めてセミの声を聞きました(2025/12/06閲覧)
  2. Wikipedia セミ(2025/12/07閲覧)
  3. 【セミの鳴き声と亀さん、平和だなぁ@グエンフーカン沿い】(2025/12/08閲覧)
  4. ハノイの蝉(2025/12/08閲覧)

翻訳比較:つくつくぼうし

つくつくぼーし(日本)
日本語版第4巻24話
つくつくぼーし(ベトナム語)
ベトナム版(新)第4巻24話

よつばが「つくつくぼうしはセミではなく妖精」と勘違いするネタがある。日本語名「つくつくぼうし」がセミの名を冠しておらず、かつ呼び名が鳴き声に由来することによって成立するネタだが、国によっては「〇〇セミ」といった名前だったり、鳴き声と呼び名が異なるので翻訳が難しい箇所の一つである。

前述の通りセミの種類は少なそうだが、さっそく見ていこう。

書き文字「つくつくぼーし」

よつば「つくつくぼーしがつくつくぼーしいってる」
とーちゃん「ああ つくつくぼーしだからな」 出典:日本語版第4巻24話

書き文字「Tsuku tsuku boshi」

よつば「TSUKU TSUKU BOSHI* KÊU "TSUKU TSUKU BOSHI" KÌA BỐ.(つくつくぼーし*がつくつくぼーしいってる)」
とーちゃん「Ừ, THẾ NÊN NGƯỜI TA MỚI GỌI CHÚNG LÀ TSUKU TSUKU BOSHI.(ああ だから皆つくつくぼーしって呼ぶんだ)」
*Loài ve xuất hiện độ cuối hè đầu thu ở Nhật.
(*注釈:日本で夏の終わりから初秋にかけて現れる種類のセミ) 出典:ベトナム版(新)第4巻24話

「TSUKU TSUKU BOSHI」のままのようだ。

調べた限りツクツクボウシのベトナムでの情報は見当たらなかったが、仮にいたとしても「〇〇ゼミ」といった名前が付いていた時点で成立しづらいネタであるため、潔く「TSUKU TSUKU BOSHI」を固有名として訳したのだろう。

4巻ラストの「つくつくぼうしは セミでした」のほうは「TSUKU TSUKU BOSHI LÀ MỘT LOÀI VE SẦU.」となっており、こちらもほぼそのまま訳されている。