タイトル | YOTSUBA&! |
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出版社 | ADV Manga |
形式 | ペーパーバック |
サイズ | 188×126×17mm |
集めた数 | 5(全巻) |
英語圏における旧版。出版を手掛けていたA.D.Visionが2009年に倒産したことから、5巻までで発行が打ち切られている。
本に直接「あずまんが大王の作者!」といった宣伝を書くあたりに、単行本に対する日米の違いが見て取れる。
作中のオノマトペなどは横に訳を添える方式で、絵の修正を伴う改変はほぼ見られない。(書き文字のセリフ程度)
1巻7話で、よつばが「翻訳家とこんにゃくやを間違える」というネタがある。これは日本語特有のシャレであるため、言語ごとに違いが出やすく面白い。
日本語→英語の順で比較していこう。
とーちゃん「んー?」「しごとー?」「翻訳家だよー」
出典:日本語版第1巻7話
よつば「こんにゃくや」
風香「へ?こんにゃく屋?」
続いて英語におけるやりとり。
とーちゃん「HN?」「MY JOB?」「I'M A TRANSLATOR.(翻訳家だよ)」
出典:英語版(新)第1巻7話
よつば「A TRA... A TRAIN SPOTTER!(鉄道マニア!)」
風香「A WHAT?(え、なに?)」
日本語のシャレをキープするのは難しかったのか、英語版は単にTRANSLATORからの連想になっている。 TRAIN SPOTTERは機関車マニアや電車オタクみたいな意味らしい。(それは職業なのだろうか)
ちなみに、こんにゃく屋ネタは4巻でも登場するのでこのままだと成立しなくなってしまうのだが、YenPressの新版と異なり特に注釈は無い。ADV版の第1巻は2005年6月に発売、日本語版の4巻は2005年8月発売ということもあり、まさか4巻でロングパスが飛んでくるとは思わなかったのだろう。YenPressは後発なので有利だ。
よつばと序盤にはしばしばセミの名前が登場する。
英語ではどう翻訳されているかについて紹介する。
ジャンボ「おーおめでとう あぶらぜみだ」
ジャンボ「クマゼミだ!クマは今日それ一匹だけだ!一番大きいぞ」
出典:日本語版第1巻6話
ジャンボ「HEY, GOOD GOING(おめでとう). HE'S A BIG ONE, HUH?(大物だぞ?)」
ジャンボ「HE'S A BIG ONE(大物だ!), ALRIGHT. THE BIGGEST ONE WE'VE SEEN YET!(一番大きいぞ!) WAY TO GO.(よくやった!)」
出典:英語版(旧)第1巻6話
セミの名前には触れず、単にサイズのみの言及にとどまっている。後発のYenPress版では日本語に忠実にABURAZEMIやKUMAZEMIと訳したうえで注釈で説明を入れていたが、ADV版は物語として自然に読めるようにしているのか特に注釈は無い。
環境的な背景に目を向けると、一応アメリカにもセミ自体は生息しており、「Cicada(シカダ)」と呼ばれている。ただし、アブラゼミやクマゼミはアジア圏にしか分布が無いようだ※1※2。こうした違いもあって翻訳にも違いが出ているものと思われる。
4巻24話で、よつばが「つくつくぼうしはセミではなく妖精」と勘違いするネタがある。このネタは日本語名「つくつくぼうし」がセミの名を冠しておらず、かつ呼び名と鳴き声が同じであることで成立しているが、国によっては「〇〇セミ」といった名前だったり、鳴き声と呼び名が異なるので翻訳が難しい箇所の一つである。
書き文字「つくつくぼーし」
よつば「つくつくぼーしがつくつくぼーしいってる」
とーちゃん「ああ つくつくぼーしだからな」 出典:日本語版第4巻24話
書き文字「TSUKUTSUKU BOLUSHI」
よつば「THAT TSUKUTSUKU-BOSHI IS SAYING "TSUKUTSUKU-BOSHI"*!」
とーちゃん「THAT'S BECAUSE IT'S A TSUKUTSUKU-BOSHI.」
* A TYPE OF CICADA; THE NAME IS AN APPROXIMATION OF THE SOUND IT MAKES.
(※注釈:セミの一種。鳴き声にちなんで名づけられた) 出典:英語版(旧)第4巻24話
ADV版では直訳で「TSHUKUTSHUKU-BOSHI」と訳されている。さすがにニュアンスをそのままローカライズすることは不可能だったようだ。なお、YenPress版でもここは同じく「TSHUKUTSHUKU-BOSHI」としているので、やはり鬼門のようである。
YenPress版もADV版も注釈を入れることでその後のネタと齟齬が出ないよう対応している。