タイトル | โยทสึบะ หนูเด๋อจอมป่วน! |
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出版社 | เนชั่น เอ็ดดูเทนเมนท์ |
形式 | カバー |
サイズ | 178×125×8mm |
集めた数 | 12 |
タイトルの前半「โยทสึบะ」は「よつば」の音写。「หนูเด๋อจอมป่วน!」は「破天荒な子供」とか「騒々しい少女」、「いたずら好きの小さなネズミ」といった意味…らしいがタイ語は全然わからないので確かなことは言えない。
(それにしても縦長によく詰め込んだものである)
本文が新聞紙のように柔らかい紙質で、単行本の厚みが日本の半分ほどしか無い。ただ、表紙はカバー付きでカバー下のネタも収録されている。
特筆するべきは文字方向に合わせて絵がすべて反転している点で、それに伴い作中の書き文字の日本語などもすべてタイ語にローカライズされている。
日本の漫画を左右反転で翻訳する方式は、英語圏などでも1990年代以前に出版されたものに多く見られる。タイでも1990年代に流通していた漫画の多くが左右反転して出版されていたようだ※1。(ただし、当時は海賊版が多かったらしい※2)
英語圏では2000年代頃から日本と同じ綴じ方向で翻訳される方式が主流になりつあり※3、タイでも2024年からみて20年ほど前(=2004年ごろ)から徐々に日本と同じ右綴じで翻訳されるケースが増えている※4。
『よつばと!』1巻の日本語版が2003年、タイ語版が2006年に発行されたことを踏まえるとちょうど過度期だった可能性がある。
1巻7話で、よつばが「翻訳家とこんにゃくやを間違える」というネタがある。これは日本語特有のシャレであるため、言語ごとに違いが出やすく面白い。
日本語→英語の順で比較していこう。
とーちゃん「んー?」「しごとー?」「翻訳家だよー」
出典:日本語版第1巻7話
よつば「こんにゃくや」
風香「へ?こんにゃく屋?」
続いてタイ語におけるやりとり。
とーちゃん「หือー?」「งานเหรอ?(しごとー?)」「นักแปล หนังสือจ้ะ(本の翻訳家だよ)」
出典:タイ語版第1巻7話
よつば「นักแปลง หนังเสื่อ(革のござを変換)」
風香「เอ๋? นักแปลง หนังเสื่อ?(へ?革のござを変換?)」
日本語のシャレをキープするのは難しかったのか、コンニャクは潔く諦めている。
とーちゃんのセリフ「นักแปล(ナックプレェー)」が翻訳家、「หนังสือ(ナンステゥー)」が本、「จ้ะ(チャ)」が丁寧な語尾だそうなので、こちらは概ね日本語そのまま訳されているようだ。原語にない「本の」と足されているのは、よつばの聞き間違えのシャレを作りやすくするためだと思われる。
よつばのセリフ「นักแปลง(ナックプレェーン)」は変換を意味し、「นักแปล(ナックプレェー)」と対応している。
「หนังเสื่อ(ナンステゥーア)」の方は「หนัง(ナング:革、皮)」と「เสื่อ (ステゥーア:ござ、マット)」を合わせた言葉で、「หนังสือ(ナンステゥー)」に対応している。
「革のござを変換」というのはよく分からないが、まあよつばが言っていることだし…といった感じだ。
さて、この「こんにゃく屋」ネタは4巻にも登場しており、そちらではどうなっているかというと、
風香「よつばちゃんのお父さんこんにゃく屋さんだったよね?」
出典:日本語版第4巻24話
風香「นอกจาก แปลงหนังเสื่อคุณพ่อยังทำ *คอนเนียะคุ ด้วยใช่มั้ย?(お父さん ござだけじゃなく こんにゃくも作ってるんだよね?)」
※注釈:อาหาร ลักษณะ คล้าย วุ้น สีออก เทาๆ มทง แบบก้อน และ แบบ เส้น ทำจาก หัวบุก เป็น อาหาร สุขภาพ(こんにゃくの根から作られた、灰色がかったゼリー状の食べ物で、ブロック状と麺状のものがあり、健康食品)
出典:タイ語版第4巻24話
軌道修正のためにござは残したうえで、こんにゃくも作っていることになっている。こんにゃくの話はここまで出てこなかったので少々苦しい気もするが、完全スルーではなく過去の話を踏まえて翻訳しているようだ。
てっきり注釈で1巻のやりとりに関する説明を加えるかと思いきや、注釈はこんにゃくの説明にとどまっている。
よつばと序盤にはしばしばセミの名前が登場する。
英語ではどう翻訳されているかについて紹介する。
ジャンボ「おーおめでとう あぶらぜみだ」
ジャンボ「クマゼミだ!クマは今日それ一匹だけだ!一番大きいぞ」
出典:日本語版第1巻6話
ジャンボ「อ้อ-ยินดีด้วย เน้อ(おーおめでとう) จักจั่น อาบูระ ซะด้วย(あぶらぜみだ)」
ジャンボ「จักจั่นคุมะน่ะ!(クマゼミだ!) คุมะตัวแรก ของวันนี้เลย!(クマは今日はじめてだ!) นี่ ตัวใหญ่ ที่สุด ด้วยนะ(一番大きいぞ)」
出典:英語版(旧)第1巻6話
セミ以外の部分からの解説になるが、ジャンボのセリフ「ยินดีด้วย」が「おめでとう」で、「เน้อ」は「〜もまた」といった共感を示す言葉のようだ。Geminiによると北部方言(ムアン語)であり、少し柔らかいニュアンスになるとのこと。親しみを込めた語尾表現としては「เนอะ」も存在し、こちらは標準タイ語で使われるらしい。バンコクをはじめとする標準タイ語とは少し違う言い回しをすることで、ジャンボの人間性を表現しているのかもしれない。
「จักจั่น อาบูระ」のうち、「จักจั่น」がセミ、「อาบูระ」はルビの通りそのまま油を意味する。現地に「อาบูระ」の借用語は無いようなので、このアブラゼミは直訳と思われる。日本語の感覚で言えば「オイル蝉」みたいな感じだろうか。クマゼミ(จักจั่นคุมะ)のほうも直訳のようだ。
ここまで直訳だとタイに蝉がいないようにも思えるがそんなことはなく、タイにも日本にいない種類の蝉含めて多数生息している※1※2。
4巻24話で、よつばが「つくつくぼうしはセミではなく妖精」と勘違いするネタがある。このネタは日本語名「つくつくぼうし」がセミの名を冠しておらず、かつ呼び名と鳴き声が同じであることで成立しているが、国によっては「〇〇セミ」といった名前だったり、鳴き声と呼び名が異なるので翻訳が難しい箇所の一つである。
書き文字「つくつくぼーし」
よつば「つくつくぼーしがつくつくぼーしいってる」
とーちゃん「ああ つくつくぼーしだからな」 出典:日本語版第4巻24話
書き文字「มีงมีงーง」
よつば「สีขุสีขุโบชิ กำลังร้อง มิ้งๆ(つくつくぼーしがミンミンいってる)」
とーちゃん「ก็เป็น สีขุสีขุโบชิ นี่นา(つくつくぼーしだからな)」
* สีขุสีขุโบซิ = จักจั่น ชนิดหนึ่ง มัก ส่งเสียงร้อง ที่เป็น เอกลักษณ์ ในช่วง ปลาย ฤดูร้อน จนถึงต้นฤด ใบไม้ร่วง
(※注釈:ツクツクボウシ=晩夏から初秋にかけて特徴的な鳴き声を出すセミの一種) 出典:英語版(旧)第4巻24話
まず、書き文字の鳴き声は「ミンミーン」といった音のようだ。これではミンミンゼミみたいだが、あえて変更しているあたりの意図はイマイチ分からない。
「つくつく」ではなく「しくしく」になっているのは、タイ語に「ツ」の音が無いためだと思われる※1※2。引用元のサイトで「ツナミ」が「スナーミ」になった例が紹介されているように、ツは別の音に置き換えられることが多いようだ。
その法則で行くと今度は「なぜスクスクボウシではないのか」という疑問が浮かぶが、これは「ツク」を「スク」としてしまうと、「สุข (sùk=幸福)」という意味になってしまうからではないだろうか※3。「สีขุ(シク)」のほうは特にそういった意味はないようなので、「ス」の次点で「シ」があてがわれた可能性がある。