タイトル | yotsuba&! |
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出版社 | Elex Media Komputindo |
形式 | ペーパーバック |
サイズ | 172×114×8mm |
集めた数 | 3 |
タイトルは「yotsuba&!」で、海外タイトルとしてはよくある命名。海外版としてはもっとも小さく、新書判に似たサイズ感である。
表紙下に書かれた「BUKU KOMIK ELEX MEDIA KOMPUTINDO」は例えるならば「電撃コミック」みたいなレーベルを表すもののようで、「BUKU KOMIK(ブックコミック) ELEX MEDIA KOMPUTINDO(出版社名)」といった意味のようだ。
単語が英語に似ているのは外来語を取り入れているためであり、日本語でも「コミック」「COMIC」のように表記が違うが意味が同じみたいなことである。
オノマトペや書き文字のセリフは書き換えるローカライズだが、背景の文字などは日本語のままになっている。
1巻の終盤のシーンで、よつばが「翻訳家とこんにゃくやを間違える」というものがある。これは日本語特有のシャレであるため、言語ごとに違いが出やすく面白い。
まずは日本語におけるやりとりから。
とーちゃん「んー?」「しごとー?」「翻訳家だよー」
よつば「こんにゃくや」
風香「へ?こんにゃく屋?」 出典:日本語版第1巻7話
続いてインドネシア語におけるやりとり。
とーちゃん「HM?」「PEKERJA-AN AYAH APA?(とーちゃんのしごとは何かって?)」「PENER-JEMAH, TULIS-MENULIS(翻訳者だよ、執筆。)」
出典:インドネシア語版第1巻7話
よつば「PEMERAS ILIS-ILIS(こんにゃくや)」
風香「EH? ILIS-ILIS?(え、こんにゃく?)」
*Ilis-ilis dalam bahsa Jepang disebut konnyaku. Bahan diet berserat yang biasa dikonsumsi di Jepang, berasal dari akar-akaran. Sayangnya, nama ilis-ilis tidak begitu dikenal di Indonesia
(※注釈:イリス-イリスは日本語ではコンニャクと呼ばれている。日本ではよく食べられている根由来の食物繊維成分。残念ながら、イリス-イリスという名前はインドネシアではあまり知られていない)
海外言語では珍しくコンニャクを維持している。
「PENERJEMAH(プヌルジュマ:翻訳者)」が「PEMERAS(プムラス:搾る人)」に対応している。ニュアンスまでは掴めないが、作業工程として用いている言葉だろう。
「TULISMENULIS(トゥリスメヌリス:執筆)」は「ILIS-ILIS(イリスイリス:コンニャク)」に対応している。
コンニャクを直でシャレに持ってくるのが難しいためか、インドネシア語版では「執筆」の一語を足すことで成立させているようだ。
もっとも、注釈の通りインドネシアではあまりコンニャクに馴染みが無いとのこと。あくまでオリジナル版のニュアンスを伝えるための翻訳といった感じだろうか。
よつばと序盤にはしばしばセミの名前が登場する。
インドネシア語ではどう翻訳されているかについて紹介する。
ジャンボ「おーおめでとう あぶらぜみだ」
ジャンボ「クマゼミだ!クマは今日それ一匹だけだ!一番大きいぞ」
出典:日本語版第1巻6話
ジャンボ「OOH... SELAMAT, YA(おーおめでとう)」「ITU TONG-GERET MINYAK(あぶらぜみだ)」
ジャンボ「OOH, ITU TONGGERET BERUANG!(熊のセミだ!) HANYA ADA SEEKOR HARI INI!(今日はそれ1匹だけだ!)」「PALING BESAR, LHO(一番大きいぞ)」
出典:インドネシア語版第1巻6話
直訳の雰囲気では日本語の名前をキープしているようだ。詳しく見ていこう。
まず、「TONGGERET(トンゲレット)」がインドネシア語でセミを意味する※1。ただし、同じインドネシアでも地域によってはセミが生息しておらず※2、加えてインドネシアは多民族国家であり、公用語としてのインドネシア語とは別に800以上の地方言語が存在する※3。こうした地域差や地方言語の違いがあることから、馴染みのあるセミの呼び方も人により違っている可能性がある※4。(インドネシア語版Wikipediaにもいくつかの民族による呼び名が紹介されている)
インドネシア語版『よつばと!』において、アブラゼミは「TONGGERET MINYAK」と訳されている。
「TONGGERET(トンゲレット)」は前述の通りインドネシア語でセミ、「MINYAK(ミニャック)」は油を意味する。つまりは直訳でアブラゼミなのだが、検索した限りヒットしなかったのでアブラゼミの現地での通称というわけではないようだ。地域差なども考慮して現地の人に馴染みのあるローカライズまでは断念したのかもしれない。
一応インドネシアにもアブラゼミは生息しているようだが、種類について詳しい情報は見当たらなかった。一応、タクア・スペキオサ種のキエリアアブラゼミがインドネシアにいるようだが※5、この種はサイズも大きく見た目もきれいなので、日本におけるアブラゼミの訳としては適さない。
つづいて、クマゼミは「TONGGERET BERUANG」と訳されている。「BERUANG(ベルアン)」は熊を意味するので、こちらも直訳で熊のセミ、クマゼミとなっている。
前述のアブラゼミの例を見るに、おそらくこちらも意味を優先した翻訳であり、クマゼミが一般的にそう呼ばれているといったことではなさそうだ。